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新制度「育成就労制度」について考察

新制度「育成就労制度」について考察

技能実習制度に代わる新たな制度の最終報告案が出ました。新たな制度の名称は「育成就労制度」に決まりましたね。では、技能実習から育成就労に制度が変わったら、どんな影響が出そうなのか、現段階(2024年11月)の情報を元に考察してみました。

当記事はこちらの方におすすめです。🇯🇵🇻🇳

  • 技能実習生を受け入れている
  • 技能実習制度に変わる新しい制度に関心がある
  • 外国人活用を検討している

「育成就労」については新しく創設される制度であるため、あくまで現段階での考察であることをご了承ください。(2024年11月時点)

参考:出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議

新制度についてはまだ途中の段階といえど、今から概要を知って準備しておくことは必要です。

そこで、最終報告案を受けてどんな影響があって何に対応していくのが必要かを予測していきたいと思います。

新制度(育成就労)によって受入企業に対して大きな影響の可能性があるのは次のポイントです。

  • 人材は転籍(転職)ができるようになる
  • 技能実習生制度よりも任せられる業務の範囲が広がる
  • 今まで技能実習生を受け入れてきたが、受け入れができなくなる企業が出てくる
  • 監理団体の数が減少する
  • 育成就労人材は最長で合計4年間の日本滞在ができる
  • 受け入れ可能人数の上限が変わる
  • 送り出し手数料を受入企業と育成就労人材で分担する

上記のポイントは”可能性がある”という意味であり、確定していないことに留意してください。

※育成就労に関する一般事項や技能実習制度との比較は下記のブログへ

目次

人材は転籍(転職)ができるようになる

今回の制度の創設で最も大きな変化点は、外国人材の意向による転籍(転職)が可能になったことでしょう。

技能実習制度においては、ハラスメントや給料不払い等の「やむ得ない事情」が認められる場合は転籍(転職)が可能ですが、外国人材の意向による転籍(転職)が認められていません。

転籍(転職)の要件は、

(本人の意向による転籍)

(略)以下の要件をいずれも満たす場合には、本人の意向による転籍も認める。

ア 同一の受入れ機関において就労した期間が1年を超えていること(注1)

イ 技能検定試験基礎級等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格していること(注2)

ウ 転籍先となる受入れ機関が、例えば在籍している外国人のうち転籍してきた者の占める割合が一定以下であること、転籍に至るまでのあ っせん・仲介状況等を確認できるようにしていることなど、転籍先とし て適切であると認められる一定の要件を満たすものであること

育成就労人材の受け入れをしてから1年後には、転職が可能になっていると考えた方がいいです。

日本語能力試験N5レベルの試験合格が要件になっていますが、勉強すればほぼ誰でも合格します。

むしろ、N5レベルに合格できない人材を採用すべきではないといえます。

「ウ」の転籍先の企業の要件も規定しているのは注目すべき点です。

転職者が多く在籍している企業は、転職受け入れの基準が適用され、新たな転職の受け入れができなくなります。

この点、運用面でどうするかという課題はあります。まず転職者の受け入れ上限は誰が決定するのか、転職者数の管理はどのように誰が実施し、決定権者は誰になるのかは気になるところです。

既に特定技能制度で設置されている分野別協議会が担っていくと思われます。

転職元の受入企業に対しては、受け入れコストの補填を認められています。

(本人の意向による転籍に伴う費用分担)

本人の意向により転籍を行う場合、転籍前の受入れ機関が支出した初期費用等のうち、転籍後の受入れ機関にも分担させるべき費用について は、転籍前の受入れ機関が正当な補填を受けられるよう、転籍前の在籍期 間や転籍前の受入れ機関による当該外国人に対する初期の育成に係る負 担等を勘案した分担とするなど、その対象や分担割合を明確にした上で、 転籍後の受入れ機関にも分担させるなどの措置をとることとする。

こちらの点も運用面でどうするかが気になるところですね。

受け入れコストの総額を証明する方法や、誰がコストとして認めるのか、あるいは一定額とするのか等、どうなるのか今後の注目ポイントです。

転職支援については、監理団体が中心になってやっていくことになります。

日本の人材会社が転職を斡旋する形になり、結果、転職が激増するということにはならないよう配慮はされているようです。

(転籍支援)

転籍支援については、受入れ機関、送出機関及び外国人の間の調整が必要であることに鑑み、新たな制度の下での監理団体(後記5参照)が中心 となって行うこととしつつ、ハローワークも外国人技能実習機構に相当 する新たな機構(後記5参照)等と連携するなどして転籍支援を行うこと とする。また、悪質な民間職業紹介事業者等が関与することで外国人や受 入れ機関が不利益を被ることがないよう、転籍の仲介状況等に係る情報 の把握など、必要な取組を行う。

転職先の業務については、転職元と同一の業務区分となります。

(転籍の範囲)

転籍の範囲は、人手不足分野における人材の確保及び人材育成という制度目的に照らし、現に就労している業務区分と同一の業務区分内に限るものとする。

育成途中で帰国してしまった者にも再チャレンジが認められています。

再チャレンジの際は、以前の育成就労としての滞在期間が2年以下であり、かつ、以前とは違う分野の育成就労のみ認められます。

(育成途中で帰国した者への対応)

育成を終了する前に帰国した者については、新たな制度でのこれまでの我が国での滞在期間が通算2年以下の場合(注3)、新たな制度により、 それまでとは異なる分野・業務区分での育成を目的とした再度の入国を 認めることとする。

でも再チャレンジが認められるからといって、安易に途中帰国してしまうのは避けるべきですね。

技能実習生制度よりも任せられる業務の範囲が広がる

鉄工作業の様子

育成就労になると、特定技能と同じ業務の範囲に広がります。

ただし、自社が特定技能の受け入れられる12分野の内に該当していることが前提となります。

自社の産業分野・業務区分において、特定技能が従事できる業務範囲を調べてみましょう。技能実習よりも柔軟に業務を割り当てることができることが分かるかと思います。

各分野や業務区分で認められている具体的な業務内容は、下記のブログに記載しています。

特定技能の業務範囲はざっくりしているので、細かい部分が気になる場合は、自社の事業が該当する分野の協議会に確認してみましょう。

(人材育成・技能評価)

2 新たな制度は特定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指すものであるため、外国人が従事できる業務の範囲については、外国人が現 行の技能実習よりも幅広く体系的な能力を修得できるよう、特定技能の 業務区分(注1)と同一としつつ、人材育成の観点から、当該業務区分の中で修得すべき主たる技能を定めて計画的に育成・評価を行うものとする。

今まで技能実習生を受け入れてきたが、受け入れができなくなる企業・事業所が出てくる

育成就労を受け入れることができる分野は、特定技能で認められている分野と同じとされています。

このため、特定技能を受け入れ可能分野に該当していない企業・事業所は、育成就労も受け入れることができなくなります。

(受入れ対象分野)

1 新たな制度の受入れ対象分野については、現行の技能実習制度の職種等を機械的に引き継ぐのではなく、新たな制度と技能実習制度の趣旨・目 的の違いを踏まえ、新たに設定するものとする。その際、新たな制度が人 手不足分野における特定技能1号への移行に向けた人材育成を目指すも のであることから、新たな制度の受入れ対象分野は、特定技能制度における「特定産業分野」が設定される分野に限ることとし、我が国内における 就労を通じた人材育成になじまない分野については、新たな制度の対象 とせず、特定技能制度でのみ受け入れることを可能とする。

特定技能で受け入れることができない分野の企業であると、育成就労の人材についても受け入れることができないことを意味します。

しかしながら、育成就労の人材を受け入れることができないとなると、外国人材の労働力を多く使っている企業は大いに混乱することになってしまいます。

下記のように最終報告書案でも述べられているとおり、何らかの対応がされると思いますが気になるところです。

”新たな制度及び特定技能制度における受入れ見込数や受入れ対象分野 は、国内労働市場の動向や経済情勢等の変化に応じて適時・適切に変更で きるものとし、真に人材を必要とする分野等に必要な人員が行き渡るようにする。”

監理団体の数が減少する

育成就労の制度に移行した後の監理団体については、現行の監理団体の自動的移行は認めない方向です。目的は不適切な監理団体を排除するためなので、通常の監理団体がいきなりなくなってしまうことはないです。

このため、経過措置期間も設けられるはずなので、これまで付き合ってきた監理団体が突然消滅するということは起こらないです。

財務基盤が弱いと判断されたり、受入企業が1社であるような小規模監理団体については、育成就労へ移行時に監理団体として認められなくなる可能性があることには注意を要します。

(監理団体)

3 (略)〜制度施行に伴い、新たに許可を受けるべきものとする。その際、監理団体に対しては、新たな許可要件にのっとり厳格に審査を行い、機能が十分に果たせない監理団 体は許可しないものとする。

育成就労人材は最長で合計4年間の日本滞在ができる

在留資格

特定技能1号を目指す育成就労人材は、最長で4年間も日本に滞在できることになります。

育成就労は3年間で終わりますが、特定技能になるための試験に合格していれば、育成就労後に特定技能1号に移行できます。

ただし、中には特定技能の試験に不合格となってしまう人も出るはずです。不合格者を救済するために、再受験に必要な範囲で最長1年間の在留継続が認められます。

このため、最長で合計4年間の日本滞在が可能になります。

この最長1年間の在留期間中は、おそらく就労もできると予測しています。理由は、就労ができないとなると外国人材は生活に困ってしまうはずだからです。

ただし働ける時間数の制限等、何らかの制限が加えられるかもしれません。

新たな制度で育成を受けたものの、特定技能1号への移行に必要な試 験等に不合格となった者については、同一の受入れ機関での就労を継続 する場合に限り、再受験に必要な範囲で最長1年の在留継続を認める。

受け入れ可能人数枠の決まり方が変わる

受け入れ可能人数については、まず産業分野ごとに受入れ見込み数が設定されます。

受入れ見込み数の判断は政府がすることになっています。

新たな制度及び特定技能制度における受入れ見込数の設定、受入れ対 象分野等の設定、特定技能評価試験等のレベルや内容の評価等について〜(略)〜制度全体としての整合性に配慮しつつ、政府が判断するものとする。

個別の企業の受け入れ人数枠は、技能実習と同じように企業規模などによって決められますが、具体的な人数はまだ示されていません。

(受入れ機関)

新たな制度の下での受入れ機関については、人材育成の観点から、現行の技能実習制度における受入れ機関ごとの受入れ人数枠を含む育成・支援体制等の要件を適正化して設定するとともに、人材確保の観点から、現行の特定技能制度における分野別協議会への加入等の要件を設けた上で、その他より適切性を確保するために必要な要件を新たに設けることを検討する。(略)

産業分野全体で何人の育成就労人材を受け入れるかという観点が入るのが、新制度の特徴です。

このほか、技能検定試験基礎級等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)の合格率等を優良認定の指標とすることも述べられています。

人材育成への取り組みと成果が優良認定に影響してくるということです。

優良認定されると受け入れ人数枠が大きくなります。逆に優良認定されないと受け入れ人数枠は変わらないです。

したがって、人材育成への評価が受け入れ可能人数に影響することになります。

(悪用防止及び適切な人材育成のための措置)

上記の転籍等に係る制度の悪用防止や、適切な人材育成を促すため、上記2の提言3に係る試験の合格率等を、受入れ機関及び監理団体の許可等の要件や優良認定の指標とする。

【日本語向上施策】

受入れ機関による支援のインセンティブとなるよう、受け入れた外国 人の日本語能力試験等の合格率など日本語教育支援に積極的に取り組ん でいること等を確認するような要件を、優良な受入れ機関の認定要件とする。

送り出し手数料を受入企業と育成就労人材で分担する

技能実習生は日本へ来る前に現地の送り出し機関で日本語等を勉強しています。現地送り出し機関が、外国で募集し監理団体を通じて日本企業に紹介しているという構図になっています。

技能実習生は送り出し機関に送り出し手数料を支払って日本にやってきます。そして、技能実習生が送り出し機関へ支払う手数料の上限額は、現地の国内法で規制されています。

しかし、法律の上限通りの手数料でないケースが多数あるのは以前から問題視されてきました。

受入れ国側で”送り出し手数料を受入企業と育成就労人材で分担する”というルールがあれば、必然的に受入企業は送り出し機関の手数料を確認するようになります。

したがって、送り出し手数料が低い送り出し機関が優遇されるようになってくると考えられます。

このため、送り出し機関や送り出し国間で適正な競争が促進されることになると予測できます。

送出機関及び送出しの在り方

上記2の情報公開等の手段と併せ、外国人が送出機関に支払う手数料等が不当に高額とならないようにするとともに当該手数料等を受入れ機関と外国人が適切に分担するための仕組みを導入し、外国人の負担の軽減を図る。

送り出し手数料は法律を遵守しているか、不当な徴収金を育成就労人材が負担していないかということに関心を持つ人が増えれば増えるほど、悪質な業者を排除することにつながるかと思います。

しかしながら、育成就労人材が実際にいくら支払っているかという情報を確実に把握する仕組みを入念に作っていく必要があります。

結局のところ、育成就労人材本人に対して個別ヒアリングするのが確実ですが、そこまで細かいことまで実施できないかとも想像できます。

実際の運用面の詰め作業は今後の課題といえます。

育成就労制度のまとめ

まだ新制度については時期尚早かなとは感じますが、概ね現在の方向で進むことが予想されるため記事にしました。

気になる点があれば、現在付き合いのある監理団体や送り出し機関へ確認してみましょう。

技能実習制度との比較記事は下記のブログで説明しているため、こちらも確認してみてください。 

当協会では、特定技能、技能実習、エンジニア、インターン、ベトナム現地の教育機関との提携など、様々な形で人材に対する課題解決をおこないます。

ベトナム人材について何かご質問があれば、ぜひお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡いただければと思います。

※参考資料

技能実習生制度と育成就労制度のイメージ図
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この記事を書いた人

日本の製造現場(メッキ・熱処理)の責任者としてエンジニア・技能実習生の管理をしました。その後、ベトナムに単身渡り、現地送り出し機関で顧客対応・開拓に従事していました。
日本帰国後は、越境産学連携や人材活用のコンサルティングをしています。「ベトナムウェブ通信」にてブログ発信しながら、ベトナム人のインターン及びエンジニア等の活用支援を行っています。

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