技能実習生を受け入れる時のコストは?|費用項目ごとにわかりやすく説明
外国人技能実習生を受け入れることを考えた時、「コストはいったいどのくらいかかるのか?」というのは担当者であれば誰もが抱く疑問です。思っていたより技能実習生を受け入れる時のコストがかさむ、これでは社内稟議が通らないという事態は避けたいものです。
技能実習生の受け入れを検討する前に、どのくらいの費用がかかるか知っておくことは、その後の工程を進めていくのに役立つかと思います。
当記事はこちらの方におすすめです。🇯🇵🇻🇳
- 技能実習生の受け入れを検討している
- 技能実習生を受け入れる時のコストを知りたい
- 各費用項目の相場を知りたい
技能実習生を受け入れるためのコストを知っておくのは、とても重要なことです。よく、外国人を受け入れるとコスト削減につながるといった誤った情報を元にしてしまっている方もおられます。
技能時生や特定技能を受け入れるのは、決して安く雇用できることにはなりません。むしろ、日本人を雇用した方が人件費は低く抑えられ、人材育成を長期的に図ることができるでしょう。
しかし、日本人の若者の人数が減少し、製造や建設等の現場で働くことを希望しない若者が多くなったので、外国人材でカバーする必要が出てきます。
また、将来的に現場を担う人材が枯渇する可能性が高い場合も、今から外国人材を受け入れて育成できる職場環境を整えておく必要があります。
このような外国人材を受け入れるべき状況に至った時、どのくらいのコストがかかるのかを知ることは、その後の受け入れ準備を進めていくのに必須となります。
事前準備、採用活動、受け入れ準備、受け入れ後に分けて、それぞれのステップでかかってくる費用を説明していきます。
なお、こちらのブログでは、団体監理型の技能実習生を3年間受け入れる際のコストを説明します。
技能実習生を受け入れる方法は、団体監理型と企業単独型の2種類がありますが、90%以上は団体監理型で実習生を受け入れているため、企業単独型の説明は割愛します。
事前準備の費用
まず、「これから技能実習生を受け入れよう!」と決めたら、監理団体に加入することになります。
監理団体とは、事業協同組合や財団法人などが技能実習生を受け入れるための許可を受けた団体のことです。
監理団体に加入する際に入会費を支払い、年ごとに年会費を支払うことになります。
こうした費用は、監理団体を維持運営し、適切な技能実習制度の実現に寄与するために使われます。
監理団体は行政に代わって、外国人が日本で円滑に就労や生活ができるような役割を担っているとも言えるので、こういった点を考慮してこの費用をとらえる必要がありますね。
- 監理団体への入会費 1万円〜10万円
- 監理団体の年会費 2万円~15万円
JITCO(公益財団法人国際人材協力機構)の賛助会員となるのは必須ではありませんが、加入しようとしている監理団体のフォロー内容によっては必要となります。
JITCOに加入すると、技能実習計画及びビザ申請などのサポートを受けることができ、スムーズに技能実習生を受け入れることができます。
詳しくは「JITCOの賛助会員入会について」をご覧ください。
- JITCOの年会費 5万円~15万円
採用活動の費用
事前準備が終わったら、次に採用活動に移ります。採用活動にかかる費用は、現地で面接する場合の費用のみです。
ベトナム人の技能実習生を採用する場合、通常、募集依頼をしたり面接会を開いたりすることで費用は発生しません。
実際に受け入れた後に発生し、管理費という形で人材採用にかかる費用を支払うことになります。
採用活動で発生する費用というのは、自社の面接官が海外に渡航して面接するために必要な経費のみです。
飛行機代、現地宿泊費、現地交通費、食事代が面接するためにかかってくる費用です。
航空券は、航空会社やクラスによって値段に開きが出てきます。大体、6万円あればベトナムと日本を往復できます。
燃料価格高騰によって変わってくるかもしれませんので、事前によくチェックしておきましょう。
現地宿泊費はホテルのグレードによって大きく変わります。ベトナムには、外国人の宿泊がOKで安く泊まれるローカルホテルもあるので、費用を抑えたい場合は、監理団体を通して現地送り出し機関に聞いてみるのも一つの手です。
現地の交通費や食事の費用は、あまり気にしなくても良いでしょう。
むしろ、タクシーでぼったくりに遭う、食事でお腹を壊すなどのトラブルに気をつけたほうがいいです。
現地送り出し機関が送り迎えをしてくれたり、安全なレストランを教えてくれたりするので、この点も監理団体を通して確認しておきましょう。
上記の費用を合計すると、現地の面接で面接官1人につき15万円〜25万円のコストがかかります。
- 現地面接費用 15万円〜25万円
もちろん、面接をオンラインで実施すれば現地まで行く必要がなく、費用も抑えることができます。
ただ、細かい仕草や表情など顔を合わせないと得られない情報もあり、スムーズな応答を行うためにも、少なくとも1名は自社の面接官を現地に向かわせることをおすすめします。
受け入れ準備の費用
受け入れ準備の段階で発生する費用の項目と金額は以下の通りです。
介護職種の技能実習生を受け入れる場合だけ、特別に日本語教育費用が発生するのが一般的です。
項目が多いので、一つ一つ順番に見ていきましょう。
- 技能実習計画認定申請費 3千9百円
- 在留資格申請費 2万円~5万円
- 入国前講習費 1万5千円〜3万円
- 航空券代(入国時) 6万円前後
- 実習生総合保険料 2万4千円〜6万円
- 入国後講習費用 10万円前後
- 講習手当 6万円前後
- 健康診断費 1万円前後
- 国内移動費 5千円〜3万円
- 日本語能力試験教育(介護職種) 10万円〜30万円
技能実習計画認定申請費
外国人技能実習機構へ技能実習計画を提出し計画が認定された後、在留資格の申請ができます。
計画の認定申請にかかる費用は3900円/人です。
在留資格申請費
「技能実習」の在留資格認定証明書交付を出入国在留管理庁に申請する場合の手数料自体は無料ですが、通常は監理団体に申請を依頼することから手数料が発生します。
在留資格「技能実習」の申請には、外国人技能実習機構が認定した技能実習計画を作成し、ベトナムなどの現地からも書類を集め、その他書類も揃えて入管へ提出することになります。
外国人技能実習機構の認定をとることや書類を揃えることにかなりの工数がかかるため、2万円~5万円/人の手数料がかかることになります。
入国前講習費
技能実習生として日本へ来る外国人は、母国において入国前6か月以内に1か月以上の期間かつ160時間以上の講習を受けてから入国します。
講習を実施するのは、現地の送り出し機関です。この講習にかかる費用が入国前講習費となります。
1万5千円〜3万円/人かかり、現地送り出し機関によって金額が異なってきます。
航空券代(入国時)
技能実習生が日本へ入国する際の移動費となります。
日本の法律上、日本側において入国時の渡航費用を負担することになっています。
ベトナム国内の法律においても、技能実習生の渡航費用は受け入れ国側で負担するのでなければ送り出すことができないようになっています。
ベトナム〜日本(東京・名古屋・大阪・福岡)は6万円/人くらいかかります。
実習生総合保険料
実習生総合保険料とは、技能実習生の保護を目的とした公的保険を補完する民間の傷害保険のことです。
詳細は「外国人技能実習生総合保険のご案内」をご覧ください。
この保険の特徴は、
・在留資格「技能実習1号」、「技能実習2号」、「技能実習3号」を合わせた(初期)講習期間を含む実習実施期間中の全期間をカバーする保険ですので、在留資格の変更に伴う保険加入漏れを防ぐことができます。
・治療費用については、国民健康保険、健康保険等の資格取得の時期を考慮し、母国出国から一定期間は100%補償されます。
・公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)が窓口となって取扱うことで、割引率が適用された保険料でご加入いただけます。
補償内容と保険料については、「外国人技能実習生保険料」のページをご覧ください。
3年間の保険期間で2万4千円〜6万円/人が保険料となっています。
入国後講習費用
技能実習生は、日本に入国してからいきなり企業に配属されることはありません。まず、入国後講習を約1ヶ月間受けて、日本語や法律、文化、慣習などを勉強します。
入国後講習が終わったら、いよいよ企業に配属されて就労開始となります。
入国後講習施設には宿泊施設があり、そこで集団生活をしながら勉強する環境が整っています。
施設や教員が必要となるため、入国後講習費用が発生することになります。
3年間の技能実習の場合は10万円/人前後かかります。
講習手当
入国後講習期間中、技能実習生は食事代や光熱費を支払う必要があります。
このため、受入企業が講習手当として技能実習生に支払うことになります。
講習手当の額は、現地送り出し機関と監理団体との協定書で定められています。
多くの場合、6万円/人前後となっています。
健康診断費
配属前に健康診断を行います。1万円/人くらいかかります。
国内移動費
入国後に空港から講習施設までの移動や、講習終了後に講習施設から受入企業の寮や事務所まで移動するときに発生する費用です。
これも受入企業が負担することになっています。
金額は受入企業の所在地、相手国からの航空便の状況によって決まってきます。
5千円〜3万円/人くらいを見積もっておくとよいでしょう。
技能実習生の人数が多ければ多いほど、自動車やバスで国内移動するとコスト削減につながります。
日本語能力試験教育(多くの場合は介護のみ)
介護職種の技能実習生は、日本語能力試験(JLPT)のN4以上を取得していないと、技能実習生として入国することができません。
このため、他職種の実習生よりも入国前の教育に多くの時間を使わなければいけません。
習得すべき日本語レベルにもよりますが、10万円〜30万円かかります。
なおベトナムの法律では、「介護職種において入国前講習費(日本語講習)の全額(一人10万円以上)は、日本側負担とする。」と定められています。
ベトナムから介護職種の技能実習生を受け入れる場合は、現地での日本語学習費用を負担しなければいけなくなることを考慮する必要があります。
受け入れ後の費用
監理団体へ支払う管理費
技能実習生が自社に配属された後、毎月、監理団体に管理費を支払っていくことになります。
技能実習生を受け入れるまでに監理団体は、送り出し機関の選定や現地面接で経費が発生し、国内移動や保険の手続きなどで人件費も発生してきます。
受け入れ後に技能検定や実習生との面談、法定の監査などを実施していくため、ここでも人件費が発生します。
こうした経費を補うために監理団体への管理費を支払っていくことになります。
3年間の技能実習であると、36ヶ月分の管理費を支払うことになります。
月々5,000円の管理費であれば36ヶ月で、5,000✖︎36= 180,000円/人の管理費となります。
- 管理費5千円:3年間の合計18万円/人
平均的な管理費の月々35,000円で計算すると、35,000✖︎36= 1260,000円/人の管理費となります。
- 管理費3万5千円:3年間の合計126万円/人
こうして見ると、月々の管理費の額が技能実習生を受け入れる際にかかってくるコストの大部分であることがわかります。
月々5,000円の管理費である監理団体というのは、地元の商工会議所さんや同業の仲間などが協力して立ち上げた監理団体であるケースが多いです。
事務員さんが1〜2名ほど在籍して、書類などの必要最低限の処理をしてくれるけれども、実習の実行や技能実習生のフォローなどは自社が主体となって行っていく場合が多いです。
一方、数万円の管理費となっている監理団体は、事務員、サポート担当、通訳などが在籍していて、様々な対応をしてくれるようになっています。
サービス内容は各監理団体で異なってくるので、加入する前によく確認しておくことをおすすめします。
ここで注意したいのが、管理費は安ければよいという考えは避けるべきです。
監理団体は本来、公益性の高い業務内容となっています。このため監理団体選定の際は、管理費やサービス内容を確認しつつも、代表理事の考え方・発起人の理念などが自社の考え方と同じ方向なのかをしっかり見定めることが大切です。
送り出し機関の管理費
技能実習生が自社に配属された後、毎月、監理団体に管理費を支払っていくことになります。
日本にいる実習生に関してベトナム側で対応する用件が発生した場合、送り出し機関が対応したり、その他送り出し機関の協力が必要になった際に対応します。
また送り出し機関の管理費には人材紹介手数料の側面もあります。ベトナムで人材を募集し、送り出しの申請手続きなどを行っているため、これらに対する手数料となります。
ベトナムの法律では、介護職種以外の職種で技能実習生を送り出す場合、最低5,000円/人の送り出し手数料を日本側に請求することになっています。
介護職種の実習生については、最低10,000円/人の手数料を請求することとされています。
送り出しにかかるコストや利益をベトナム人労働者のみが負担することにならないように法律で上記のことが定められています。
月々5,000円の管理費であれば36ヶ月で、5,000✖︎36= 180,000円/人の管理費となります。
- 管理費5千円:3年間の合計18万円/人
月々10,000円の管理費であれば36ヶ月で、10,000✖︎36= 360,000円/人の管理費となります。
- 管理費1万円:3年間の合計36万円/人
※ベトナムの法律については「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」へ
航空券代(帰国時)
技能実習の修了後、帰国する際の航空券代も受入企業が負担することとなっています。
技能実習の途中で外国人が一時的に里帰りする場合などの航空券代は負担しなくても問題ありません。(技能実習2号から3号への移行時の帰国を除く。)
技能実習生を受け入れる時のコストまとめ
最後に介護以外の一般職種の費用全体を改めて見てみましょう。
金額に幅がある項目については、中間の金額を仮に設定しています。
- 監理団体への入会費 :5万5千円
- 監理団体の年会費 :8万5千円 3年間で25万5千円
- JITCOの年会費 :5万円~15万円 ※必須でない
- 現地面接費用 :15万円〜25万円 ※オンライン面接で0にできる
- 技能実習計画認定費 :3千9百円 2回分で7千8百円
- 在留資格申請費 :3万5千円 2回分で7万円
- 入国前講習費 :2万3千円
- 航空券代(入国時) :6万円前後
- 実習生総合保険料 :4万2千円
- 入国後講習費用 :10万円前後
- 講習手当 :6万円前後
- 健康診断費 :1万円前後
- 国内移動費 :1万8千円
- 監理団体の管理費 :3万5千円/月の場合:3年間の合計126万円/人
- 送出機関の管理費 :5千円/月:3年間の合計18万円/人
- 航空券代(帰国時) :6万円前後
JITCOに加入せず、オンライン面接のみとした場合、1年目にかかるコストは約100万円/人になります。
3年間のトータルだと約220万円/人のコストとなります。
ただし実習生総合保険については、大抵の場合、3年間で3万円前後の保険料のものに入ります。また、国内移動費も抑えられる余地は多くあり、技能実習生1名につき1万8千円もかかるのは国内移動に航空機を使ったり新幹線を使ったりするケースに限られます。
現地面接を実施する場合は、別途、コストがかかってくることになります。
技能実習生の寮についても、実習生たちからの寮費徴収のみでは賃借料などを払えない場合は、受入企業が負担することになります。
なお、実習生からの寮費徴収は、1名につき2万円が上限となっています。都市部だと1名につき3万円まで徴収できることになっています。
この他、初めて実習生を受け入れる際は、寮に家具家電、什器など最低限生活を送るのに必要な物を揃えることが求められています。
この費用も1部屋につき10万円くらいはかかってきます。特に新品の冷蔵庫は高くつくので、良い状態の中古品を手配すると良いでしょう。
外国人を受け入れるには、技能実習が最も広く活用されている制度です。コスト的に厳しければ、特定技能、エンジニア、外国人インターンなどの制度も検討しましょう。
特に外国人インターンはとても有用な制度です。技能実習制度を使って外国人材を受け入れるよりも、半分以下のコストで人材を活用することができます。
外国の若者にとっては、異国の地である日本で働くことは、様々な面で学ぶことがあります。日本語を学びながら日本企業の現場を知り、日本式のQCDを経験することができます。この他にも、現場作業をしていくことで得られる仕事の経験値や、異文化交流を通してものの考え方や文化の違いを体験することができます。
一方、日本企業は外国の若者の力を活用して、職場の活性化や、将来的にエンジニアや特定技能として雇用する場合の試用期間とすることもできます。
もちろん、外国人インターンの活用にも短所もあるので、より詳しくインターン制度について知りたい方は、他ブログを参照していただくか、当協会までお問い合わせください。
他にもベトナム人材について何かご質問があれば、ぜひお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡いただければと思います。