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外国人技能実習制度の廃止と新制度の創設を決定|どうなる技能実習?

外国人技能実習制度の廃止と新制度の創設を決定|どうなる技能実習?

外国人技能実習制度の廃止と新制度(育成就労制度)の創設について議論されていましたが、最終報告書案がでましたので、今回は技能実習制度の廃止及び新制度について述べていきたいと思います。

現在、技能実習生を受け入れている日本の企業さんはぜひご覧いただければと思っています。

当記事はこちらの方におすすめです。🇯🇵🇻🇳

  • 技能実習生を受け入れている
  • 技能実習制度に変わる新しい制度に関心がある
  • 外国人活用を検討している

2023年11月24日にNHKより、”技能実習生制度を廃止 「育成就労制度」に名称変更 最終報告書”の表題で報道がありました。

外国人研修制度を経て、2010年の入管法改正によって在留資格「技能実習」ができたことにより、外国人技能実習制度が創設されました。

技能実習制度は日本の国際貢献活動と位置付けられており、技術移転を通して外国人の母国の技術発展を達成するのがその目的でした。

ただし日本の人手不足の深刻化も背景に制度の目的と実態が乖離するようになり、技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とした新たな制度をつくるために有識者による会議が重ねられてきました。

今回は有識者会議の最終報告書案を元に、技能実習制度に代わる新しい制度「育成就労制度」について見ていきたいと思います。

育成就労制度は細部までは明確ではないため、筆者の予測を含んだ内容が一部あります

※NHKの報道内容はこちら

目次

制度の比較

※技能実習制度については団体監理型を前提とします。

制度の目的

技能実習制度育成就労制度
国際貢献人材確保と人材育成

新制度の名称は「育成就労制度」と呼ばれ、労働力として受け入れるとともに人材の育成が目的となっています。

技能実習生制度と育成就労制度のイメージ図
引用:法務省「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」

就労可能期間

技能実習制度育成就労制度
1号:1年2号:2年3号:2年3年

技能実習はトータルで5年間が認められていましたが、新制度では3年が基本となります。

3年間継続して日本に在留するのか、通算で3年間の在留が認められる制度になるのかは、まだわかりません。

また、季節性のある分野(農業・漁業)で実情に応じた受入れ・勤務形態を検討されています。農業や漁業は季節によって繁忙期と閑散期がある場合が多いため、通年の受け入れではなく、閑散期は帰国してもらうなどの受け入れが可能になるかもしれません。

受け入れ対象分野

技能実習制度育成就労制度
1号:制限なし2号:88職種161作業3号:74職種130作業特定技能制度における「特定産業分野」に限定

育成就労制度において受け入れることができるのは特定技能分野と同じとなり、従事できる業務の範囲も特定技能の業務区分と同一になります。

特定技能の分野は以下の12分野がありますが、新制度ではこの12分野に当てはまらないと、育成就労制度を使って外国人を受け入れることができなくなることを意味します。

現在、技能実習生を受け入れている企業であっても、特定技能を受け入れることができない産業分野の企業であれば、新制度に移行後は受け入れができなくなるかもしれません。

この他、特定技能制度と同様、育成就労制度でも受入企業は、分野別協議会に加入することが義務付けられる方向です。

受け入れの上限人数

技能実習制度育成就労制度
あり※人数制限の詳細はこちら受入れ対象分野ごとに受入見込数を設定し、受入れの上限数として見込み数を運用 ※技能実習制度と同様に受入企業の規模に応じた受入れ人数枠の設定もされる

育成就労制度の受け入れ人数の上限は、特定技能と同様に産業分野ごとに見込み人数を決めて、見込み人数に達したら受け入れを停止する形になります。

(特定技能では、介護分野と建設分野のみ各受入企業の上限人数が設定されており、この2分野は技能実習制度のような受入人数の制限があります。)

さらに育成就労制度は、技能実習制度と同じように受入企業の規模に応じた人数枠も設定します。

よって、産業分野別の受入人数枠と、受入企業ごとの受入人数枠の2つの基準が設けられる方向ですが、まだ詳しいことがはっきりしていないため、分かりしだいブログで発信していきますね。

転籍(外国人材の転職)

技能実習制度育成就労制度
1号と2号:原則不可3号:3号に移行する際に可能一定要件の下で可能  ・同一企業での就労が1年超 ・技能検定試験基礎級、日本語能力A1相当以上の  試験(日本語能力試験N5等)合格 ・転籍先機関の適正性(転籍者数等) ・同一業務区分に限って転籍可能 

新制度では、外国人が働き始めてから1年間を超えることが転籍の要件の1つとされています。

1年間の就労期間が基本となってきますが、産業分野によっては最長2年弱の就労期間が転籍の要件になる可能性があります。

転籍のために必要な就労期間は議論が分かれており、どの産業分野であればどのくらいの就労期間を過ぎれば転籍可能となるかは、今後の争点となっているといえます。

技能検定試験基礎級、日本能力試験(JLPTのN5等)といった試験合格も要件にあります。

技能検定試験基礎級については、技能実習制度下では外国人が入国してから9ヶ月目くらいまでに受験する試験です。

合格率は90%で高い率となっていますが、反面、一定人数は不合格になっているのは事実です。

育成就労制度の技能検定の難易度はわかっていないですが、現行試験の難易度と変わらないのではないかと予測しています。

日本語能力試験(JLPT)のN5は、3ヶ月半くらいみっちり勉強すれば合格できる難易度と言われています。外国人の中には、入国前にN5に合格している人もいます。

JLPT以外で認められる日本語試験は今のところ不明ですが、JFT-Basic日本語NAT-TESTJ.TESTなども対象として認められる可能性があります。

「転籍先機関の適正性(転籍者数等)」と要件にありますが、これは特定の企業に転籍者が集中しない措置だと考えられます。

例えば、企業Aが育成就労の外国人Xさんを転籍者として雇用しようとした時、すでに企業Aが一定数の転籍者を受け入れているような場合、”転籍先機関の適正性”がないと許可権者に判断される可能性があります。

”転籍先機関の適正性”の基準については今後示されることになります。

日本では最低賃金が都道府県によって異なるため、最低賃金が高い地域へ育成就労制度の外国人材が移っていく可能性も指摘されており注目すべきポイントかと思います。

同一業務区分に限って転籍が可能であるとは、農業職種から宿泊職種に転籍することは不可であり、農業職種からは農業職種の勤務先に転籍できるという意味です。

また、同じ農業職種であっても、耕種農業から畜産農業に転籍することはできず、これも同じように耕種農業の勤務先にのみ転籍できることを意味しています。

育成就労制度では、3年間の育成期間満了前に途中帰国した外国人の再入国を認めていて、再入国時に帰国前とは異なる職種で就労することができることになっています。

育成就労制度によるトータルの滞在期間が2年以下の場合、帰国前とは異なる分野・業務区分での再入国が可能であるため、結果として転籍ができる形となっています。

この点についても詳細はまだであり、本当にこのまま法制化するかどうかも注視していく必要があります。

受入企業は外国人材を雇用するまでに面接や在留資格申請、渡航費の負担等、相当の採用コストがかかります。

このため、就労開始から1年過ぎた頃に転籍されてしまうと、海外から人材を受け入れた企業は厳しい状況となります。

逆に転籍先の企業はコストをあまりかけずに外国人材を獲得できることになります。

この点、有識者会議の最終報告書には、”転籍前機関の初期費用負担につき、正当な補填が受けられるよう措置を講じる”と配慮されています。

ただ実際に補填をどのようにするかとなると手続き上は大変な作業になるおそれもあり、補填の手続き上の具体的な流れが課題となってくるかと思います。

家族の帯同

技能実習制度育成就労制度
不可不可

1号特定技能が家族の帯同を認められていないのと同様、育成就労の人材も認められていません。

就労開始前までに必要な講習時間

技能実習制度育成就労制度
320時間以上日本語能力試験N5等合格または、相当講習受講

技能実習制度では実習開始前に320時間以上の講習を設けることが必要ですが、育成就労制度では、講習時間数や日本語以外の科目が設定されるのかまだ分かりません。

筆者の予測ですが、講習内容については技能実習制度と似たようなものになるかと思います。

外国人材が送り出し機関に支払う手数料(ベトナムのケース)

技能実習制度育成就労制度
支払い手数料の上限は賃金3ヶ月分から企業の管理費負担分を差し引いた額支払手数料を抑え、外国人と受入れ機関が適切に分担する仕組みを導入

技能実習制度において、ベトナムでは国内法によって送り出し機関へ支払う手数料の上限が定められており、かつ、日本企業が送り出し機関へ支払う管理費分が、支払い手数料から差し引かれる構造になっています。

ベトナム国内法の概要
  • 契約期間12ヵ月毎に賃金1か月分を上限とした手数料とする​
  • 最大で賃金3ヵ月分の手数料とする​
  • 手数料は、ベトナム人労働者及び受入国側(実習実施者等) が負担する​
  • ベトナム人労働者は、受入国側(企業等) の支払い分を差し引いた金額を負担する

例をあげて説明すると下図のようになります。

ベトナム国内法の参考例

現在のベトナムでは上記のルールとなっていますが、新制度に移行した際には、育成就労ベトナム人が負担する手数料分を受入企業が何割か支払うことになると予測しています。

外国人技能実習制度の廃止と新制度の創設についてのまとめ

新制度についてはまだ最終報告の段階なので、詳しくは法制化されないと分かりません。育成就労制度の対象となる、産業分野・業務区分、転籍、入国前の日本語レベル、受入企業の支払い手数料負担に関する事項が焦点になってくると思います。

新制度に関してまた新しい情報がでましたら継続して発信していきます。

当協会では、特定技能、技能実習、エンジニア、インターン、ベトナム現地の教育機関との提携など、様々な形で人材に対する課題解決をおこないます。 

ベトナム人材について何かご質問があれば、ぜひお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡いただければと思います。

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この記事を書いた人

日本の製造現場(メッキ・熱処理)の責任者としてエンジニア・技能実習生の管理をしました。その後、ベトナムに単身渡り、現地送り出し機関で顧客対応・開拓に従事していました。
日本帰国後は、越境産学連携や人材活用のコンサルティングをしています。「ベトナムウェブ通信」にてブログ発信しながら、ベトナム人のインターン及びエンジニア等の活用支援を行っています。

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