ベトナムの自動車整備士の育成について紹介|ベトナムの整備教育とは?
ベトナムではまさにマイカーブームが始まっており、10年後には爆発的に増えると予想されています。年々ベトナム人が保有する自動車の数が増えていることに伴い、ベトナムの自動車整備士の数も増えてきています。
現代のベトナムの若者(特に男性)の多くが、自動車を保有したり触ったりすることに憧れがあるため、ベトナムでは自動車整備を勉強できる学部の人気が非常に高いです。
今回は、ベトナムの自動車整備人材がどのように育成されているのかを紹介します。
当記事はこちらの方におすすめです。🇯🇵🇻🇳
- ベトナム人自動車整備士の受け入れを検討している
- ベトナム人を自動車整備士として受け入れをしている
- ベトナムにおける自動車整備士の養成や教育について知りたい
日本では自動車整備士や運転手など、自動車に関わる人材不足が進んでいます。自動車を保有する若者も減っていて、もはや自動車を運転したり保有することが憧れの対象ではなくなってきています。
しかしベトナムでは、自動車ブームに突入している最中です。
2022年には新車販売台数が50万台を超えました。ベトナムの新車販売台数は、2014年〜2022年まで年平均16%伸び率があります。
ベトナムの国民所得は右肩上がりで、国の人口も増加し2023年には1億人を突破すると予測されています。
人口も増え所得も上がっているので自動車の台数は増えていくと思われますが、
ベトナムでは自動車購入価格は日本と比べて高くなっているため(同じ車種でも日本とベトナムでは倍以上違います)、日本の高度成長期ほどの伸びはないとも言われています。
(日本は1960年に約44万台だった自動車保有台数は1970年には677万台を超えるまで急増していました。)
とはいえ、日本で何年か働いたベトナム人が母国に帰った時に驚くことの1つには、ハノイやホーチミンの自動車の数が激増していることがあります。
街の風景を変えてしまうぐらい自動車が増えているため、帰国した元技能実習生たちは年月が過ぎたことを感じる瞬間となっています。
ベトナムにおける自動車業界
進出している自動車メーカー
ベトナムに進出している自動車メーカーには、日本、韓国、アメリカ、ヨーロッパなどがあり、ベトナム資本の自動車メーカーもあります。
2018年のデータとなりますが以下のとおりです。
ベトナムの新車販売台数、普及率
2016年のベトナムにおける新車販売台数は約30万台でしたが、2022年には約50万台に到達しています。
急激な伸びはないと予測されており、なだらかに販売台数が増えていく見通しです。
2016年にはベトナム人1000人に対して16台、約1.6%の普及率でしたが、2022年には約5%に達しています。
2016年のインドネシアの普及率が約5.5%であったことから、当時のインドネシアの状況にベトナムが追いついたところです。
※引用:JETRO「ベトナム自動車産業は市場拡大に期待、EVや裾野政策は手探り続く」
ベトナムの自動車整備士の教育
教育機関と学生
ベトナム全国の理系大学、短大、専門学校では、自動車の学部学科は最も人気があります。
2021年には自動車について学ぶ学生数が123,000人以上になったとも言われています。
ただし、ベトナムでは自動車分野は発展段階であるため、就職先として自動車関係の会社に入るのは至難です。
設計、製造、整備のどの職種をとっても受け皿となる企業数は十分でなく、大学で自動車の設計を勉強しても卒業後は自動車セールスをやっている若者を見るのは珍しいことではありません。
学生の人気が高いため、ベトナムの学校側もどんどん自動車の学部学科を設置し、専門学校も同様に自動車整備コースをつくっています。
自動車学部のカリキュラム
ではどんなことを教育しているかを紹介いたします。
日本の大学で自動車を専攻している人は、より専門的な分野に向かう形で勉強を進めていきます。
対して、ベトナムの自動車学部などでは、エンジン、足回り、電気系統、板金塗装まで全体を満遍なく勉強し続けるようになっています。
ベトナムの全ての大学が上記に述べた教育内容とはなっていませんが、多くの場合、自動車全体を勉強している学生を育成しています。
このため、4年制大学を卒業した人材であっても、自動車設計よりも自動車整備の方に近いスキルを養っているケースが多いです。
教育風景
日本の自動車整備士不足に対して
ベトナムでは自動車が憧れの的で、自動車整備士になりたい人も多いけれども就職先の数が十分ではありません。
一方、日本では自動車整備士の数が減り続けていて、2011年から2022年までの間に自動車整備士の人数が約1万6000人減ったという報道もあります。
※東京新聞電子版「車の整備ができない!東京都心はもう「空洞化」〜」
このため、ベトナムから自動車整備技術を持った人材を日本に呼んで、共に整備を行い、日本の自動車運行の安全を維持していくというのは理想的なはずです。
言葉の壁があるため、現場での教育や指示がスムーズにいかないこともあるかもしれません。
しかし、生産年齢事項の減少が続き、車検制度を維持していかなければならない日本の状況を考えると、積極的に外国人材、ベトナム人材の活用を検討していくのが適切といえるかもしれません。
まとめ
ベトナム人を自動車整備士として受け入れるためには、技能実習生や特定技能の制度を使うことになります。
受け入れる際の注意点としては、自動車整備について全く知らないベトナム人を受け入れるのは大変です。
日本語だけでなく整備技術についても知らないベトナム人材を受け入れるのは、現場の日本人スタッフの負担が大き過ぎます。
ベトナム各地にある自動車学部のある大学・短大や専門学校と連携し、学生のうちから日本語を学んでもらい、卒業後は自動車整備士として日本へ行くことができるコースを設置しています。
さらに、提携先の送り出し機関の敷地内には自動車整備教室があるため、自動車整備をしながら活きた日本語会話の練習ができる環境も整えられています。
○当協会が提携している送り出し機関の自動車整備教室の様子
日本で最先端の自動車整備技術を学んだベトナムの若者が将来ベトナムに帰国し、ベトナム国内でその技術を活かしてくれれば、日本の水準並みに高度な点検基準もクリアできるのではないかと考えています。
帰国者たちのベトナムでの新たな活躍の場を提供するとともに、ベトナムの自動車運行の安全性向上を期待しています。
当協会では、特定技能、技能実習、エンジニア、インターン、ベトナム現地の教育機関との提携など、様々な形で人材に対する課題解決をおこなっています。
ベトナム人材について何かご質問があれば、ぜひお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡いただければと思います。
★参考資料:JETRO記事「ベトナム自動車産業は市場拡大に期待、EVや裾野政策は手探り続く」
ベトナムでは二輪車(バイク)の普及率が156%なのに対し、四輪車(自動車)は5%にとどまる。1人当たりGDPは2022年に4,000ドルを超え、モータリゼーションが進む段階にあるものの、自動車の普及率に急激な拡大は見られない。その背景としては、自動車の購入価格が高いことが挙げられる。ベトナムでの自動車販売価格には、車両価格に特別消費税、付加価値税、自動車登録料が上乗せされる。また、裾野産業を含めた国内の自動車生産基盤が十分に確立されておらず、車両本体や部品を輸入に依存している割合が高いため、輸送関連コストも上積みされ、タイやインドネシアと比べると、購入価格が高くなる構造になっている。